
2019年の丹後サイクル・リビングラボ(CLL)は、地域のみなさんが一丸となって前進した1年となりました。地域事業者からなる任意団体の発足、エリアごとにユニークな体験コースの策定、ユーザーテストまで……。地域が主体的に動くことで展開スピードは加速し、来期に向けてのポテンシャルも高まっています。(写真提供:京都海道)
2019年1-3月期:地域の方々との対話が進む
先期に開催したシンポジウム以降、丹後半島内ではサイクル・リビングラボの可能性について多くの方と対話が生まれました。特に、2019年1~3月にかけて、私たちは地域の事業者のみなさんを訪問したり、ワークショップを重ねました。回を重ねるごとに参加者が増えたり、対話の熱が増していきます。



実行委員会の成立
丹後の長い冬が終わり、次第に春めいてきた3月。
エリアのなかでも特にサイクル・リビングラボに意欲の高い事業者のみなさんが定期的に集うようになります。メンバーは宿泊、交通、観光など多種多様な事業者で構成されており、2019年度以降の取り組みについて協議を重ねました。


6月下旬には「京都オーシャンロード実行委員会」が正式に発足。サイクルフレンドリーな丹後半島を実現する地域の任意団体として、新たな価値をつくっていくことが確認されました。主に、近年市場が拡がりつつあるスポーツタイプのEバイクを念頭に、さまざまな実証実験やサービスの実装を進めていく予定です。
先期のシンポジウムからわずか半年で、文字どおり、地域のみなさんが主体的に動き出しはじめています(Webサイトも開設されているので、ぜひチェックしてみてください)。
実証実験、豊作の秋
当初、可能性を模索していたのは「手ぶらサイクリング体験」。エリアの玄関口である宮津駅もしくは天橋立駅から、隣県の城崎温泉(豊岡市)までの区間を、アクティブな旅行客がストレスなく体験するためにはどうしたらいいのか。着地後に自転車やウェアなど周遊に必要なアイテムが揃えば手荷物は最小限で済む。さらにその少ない荷物ですらも、着地後に宿泊先や、チェックアウト後には帰着駅に送られるしくみがあれば、旅行客は丹後にいる間ほとんど「手ぶら」でいられる。見どころの多い丹後半島を快適に、自由に周遊・体験してもらえるはず……。
そこでまず実行委員会では、事業者のみなさんに体験案を考えていただきました。すると、各エリアの魅力が詰まった、ユニークなコンテンツ案が8つも浮上します。これを元に、それぞれをユーザーテストにかけることになりました。
夏の暑さがひと段落した秋季にかけて、丹後半島では毎週のようにコンテンツの検証が行われました。テストと言えども、一般のお客さんには有償で予約から実施まで一連の体験をしてもらいます。そして、コンテンツに対して貴重なフィードバックを受けました。
コースの良し悪しはどうか。運用するうえでの課題や、改善すべきサービスのポイントは。トータルの価格感は適切か──。

準備から募集・実施にかけて充分な時間が取れず集客ができなかったり、悪天候に見舞われて中止になったりしたコンテンツもありましたが、そのアクシデントも含めて、貴重な学びの機会となりました。
来期に向けて
現在はすべてのテストが終わり、それぞれの事業者が来期以降の定常的なサービスインに向けて改善を図っています。さらに各コンテンツをサポートすべく、実行委員会では基本となるしくみ(OS)づくりに取り組んでいます。
【京都オーシャンロード基本OS(案)】
- 受付・情報発信
- 自転車レンタルサービス
- トラブルサポート
- 荷物配送サービス
- 自転車回収サービス など
このようなしくみが地域で実装されることによって、当初描いていた「手ぶらサイクリング」のようなアイデアもますます現実味を帯びてきます。これからも、旅行者を中心とするユーザーにとって有益な体験が続々とアップデートされていくでしょう。
また、外部の企業もさらなるサイクル・リビングラボとしての可能性に着目。すでに今期も、いくつかの自転車関連事業者が訪問を果たしました。多くの企業・団体にとっても、丹後半島は事業の展開や検証等の貴重なフィールドとして映りはじめています。
2020年1月22日(水)には、地域向けの報告会が「丹後王国」(京丹後市弥栄町)で開催されます。今期の詳しい振り返りと、来期以降の方針についての共有、参加者との意見交換などを行うほか、外部の専門家も参加して対話や連携の可能性を考えていく予定です。
2019年を振り返ると、サイクル・リビングラボが着実に地域に波及した1年となりました。今後、その輪はさらに地域で拡がることが予想されます。意欲的なしくみづくりやサービスの提供にもますます弾みがつくことでしょう。
2020年も、丹後サイクル・リビングラボの活動にご注目ください!
(文責・白井 洸祐)